ビジネスモデル特許ってなに?いきなりステーキなどの事例をご紹介!

ビジネスモデル特許という言葉を巷で耳にしますが、いったいどういったものなのでしょうか?

この記事では、具体的なビジネスモデル特許の事例(いきなりステーキ特許など)をご紹介しながら説明したいと思います!

 

ビジネスモデル特許とは?

ビジネスモデル特許とは、文字通り、

ビジネスモデル(ビジネスのやり方)に与えられた特許権

のことをいいます。

 

ただし、ビジネスモデルなら何でもかんでも特許を取れるというわけではありません。

特許の成立要件には、発明該当性というものがあり、特許法上の発明に該当しないものについては、特許権は付与されません。

つまり、ビジネスモデルで特許を取るには、特許法上の発明であると認定される必要があるのです。

 

では、どのようなビジネスモデルだと、発明に該当するのでしょうか?

1つの目安が、

そのビジネスモデルが、コンピューターを使って実現されるものであるか?

ということです。

ビジネスモデルの主要な処理がコンピューターによって行われるのであれば、発明に該当し、特許が取れる可能性があります。

一方で、ビジネスモデルの主要な処理のほとんどが人によって行われる(例えば、人が判断する、人が作るなど)場合、発明に該当しない可能性が高いです。

なお、発明該当性について詳しく知りたい方は、下記の特許庁の審査基準や事例集をご参照ください。



有名なビジネスモデル特許の事例をご紹介!

説明だけだとなかなかイメージが湧かないと思うので、実際に成立しているビジネスモデル特許の具体例をご紹介します!

いずれも、有名なビジネスモデル特許です!

 

いきなりステーキ特許

いきなりステーキ特許

まずご紹介するのが、「いきなりステーキのビジネスモデル特許(特許5946491)」です!

いきなりステーキは、ご存知のように、最近急激に店舗数を増やしている立ち食いステーキのチェーン店。

ステーキの提供方法について特許出願し、以下のような権利範囲で登録になっています。

 【請求項1】
お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え、上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと、上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする、ステーキの提供システム。

実はこの特許には色々とエピソードがあって、いったん特許庁の審査において特許が認められたあと、第三者から異議申立てを受けました。

その結果、いきなりステーキの特許は発明に該当しないとして、特許を取消にする旨の審決が出ました。

しかし、いきなりステーキ側(株式会社ペッパーフードサービス)が知財高裁に控訴したところ、なんと本特許は発明に該当すると認められたのです!

平成29年(行ケ)第10232号 特許取消決定取消請求事件(判決文)

 

この事件は知財業界を震撼させました・・・。

なぜかというと、知財の実務家の多くが、いきなりステーキの特許は発明該当性を満たさない(つまり特許法上の発明ではない)だろうと考えていたからです。

たしかに、クレームを見ると、「お客様を立食形式のテーブルに案内する」、「お客様からステーキの量を伺う」、「伺ったステーキの量を肉のブロックからカットする」、「カットした肉を焼く」、「焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶ」といった、人が行う行為が含まれていて、一見発明該当性がないように見えます。

 

というわけで、いきなりステーキの特許は、発明に該当するかしないかの境界線上にあるような事例といえ、ビジネスモデル特許のとり方として非常に参考になると思います。

 

freeeの自動仕訳特許

freee特許

クラウド会計ソフトを提供するfreee(フリー)が保有するのが自動仕訳特許(特許5503795です。

会計処理における仕訳というのは、人為的な取り決めであり、且つ人手でやるものであるため、本来は発明には該当しません。

しかし、この仕訳作業をAIで自動化することで、特許が認められたという事例になります。

【請求項1】
クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置であって、
ユーザーにクラウドコンピューティングを提供するウェブサーバを備え、前記ウェブサーバは、
ウェブ明細データを取引ごとに識別し、
各取引を、前記各取引の取引内容の記載に基づいて、前記取引内容の記載に含まれうるキーワードと勘定科目との対応づけを保持する対応テーブルを参照して、特定の勘定科目に自動的に仕訳し、
日付、取引内容、金額及び勘定科目を少なくとも含む仕訳データを作成し、
作成された前記仕訳データは、ユーザーが前記ウェブサーバにアクセスするコンピュータに送信され、前記コンピュータのウェブブラウザに、仕訳処理画面として表示され、
前記仕訳処理画面は、勘定科目を変更するためのメニューを有し、
前記対応テーブルを参照した自動仕訳は、前記各取引の取引内容の記載に対して、複数のキーワードが含まれる場合にキーワードの優先ルールを適用し、優先順位の最も高いキーワードにより、前記対応テーブルの参照を行うことを特徴とする会計処理装置。

 

こちらの特許は「freee vs マネーフォワード」の特許訴訟で有名になりました。

マネーフォワードが提供するMFクラウドが上記の自動仕訳特許を侵害するとして、freeeがマネーフォワードを訴えたのです。

しかし、地裁において、マネーフォワードはfreeの特許を侵害しないという判決が出ました。

平成28年(ワ)第35763号 特許権侵害差止請求事件(判決文)

その後、freeeは控訴をしなかったため、上記の判決(マネーフォワードは特許非侵害)が確定しています。

 

Amazon ワンクリック(1click)特許

アマゾン1-click特許

おそらくビジネスモデル特許の中で一番有名だと思われるのが、Amazonのワンクリック(1click)特許(特許4959817

Amazonを使ったことがある方なら必ず目にしたことがある、商品ページから注文をボタン1クリックで確定させることができる機能のことです。

特許の権利範囲は以下のよう。

【請求項1】
アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法であって、
前記クライアント・システムのクライアント識別子を、前記クライアント・システムのコンピュータによりサーバ・システムから受信すること、
前記クライアント・システムで前記クライアント識別子を永続的にストアすること、
複数のアイテムの各々のアイテムについて、
前記アイテムを特定する情報と、前記特定されたアイテムを注文するのに実行すべきシングル・アクションの指示部分とを、前記クライアント・システムのディスプレイに表示することであって、前記シングル・アクションは、前記特定のアイテムの注文を完成させるために前記クライアント・システムに要求される唯一のアクションであり、前記クライアント・システムに対して前記シングル・アクションの実行に続いて前記注文の確認を要求しないこと、および
前記シングル・アクションが実行されることに応答して、前記特定されたアイテムの注文要求と前記クライアント識別子とを、前記サーバ・システムに送信することであって、前記注文要求は、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求であり、前記クライアント識別子は、ユーザのアカウント情報を特定することを備え、
前記サーバ・システムが、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求と、前記クライアント識別子に関連付けられた1または複数の以前のシン
グル・アクション注文要求とを組み合わせ、1つの注文に結合することを特徴とする方法。

 

カブドットコム 逆指値特許

カブドットコム_逆指値特許

オンライン証券会社のカブドットコムが保有するのが逆指値特許(特許3875206です。

 

逆指値というのは、株の注文方法のひとつ。

通常の指値注文は、株価が指値よりも安くなった場合に買い注文を入れます。

一方、逆指値は、ユーザが指定したトリガー条件よりも株価が高くなったら「買い」、安くなったら「売り」の注文を自動的に行います。

 

株の注文方法自体は人為的取決なので特許の対象外ですが、これをコンピューターにより実現したことで、特許が認められています。

特許の権利範囲は以下のようです。

【請求項1】
顧客から受け付けた金融商品の売買注文を、前記金融商品の取引市場システムに自動発注するための売買注文自動発注装置であって、
前記売買注文自動発注装置は、
前記顧客が操作する顧客側端末であって、売買注文の発注画面が選択されることにより、売買注文の対象となる金融商品の銘柄を特定する銘柄情報と、前記売買注文において指定する注文数量と、前記売買注文において指定する指値又は成行のいずれかの売買形態及び指値を指定する場合の売買価格とが、少なくとも含まれる前記売買注文に関する必要項目を入力する必要項目入力欄と、取引市場における場及び各々の場における寄り、引け、不成のいずれかを注文の条件として指定する条件指定欄と、前記金融商品の価格、又は時刻の少なくとも一つを、前記売買注文を発注するトリガ条件を設定するためのトリガ項目として指定するトリガ項目指定欄の少なくとも三つの欄が含まれる発注画面が表示される顧客側端末とコンピュータネットワークを通じて接続され、
かつ、売買注文を前記取引市場システムに発注する売買システムであって、前記売買注文に対応した注文伝票を前記売買注文の発注処理のステイタスを付して記憶する発注データベースを備え、売買注文自動発注装置から受け付けた注文伝票に「待機」の前記ステイタスを付して前記発注データベースに記憶させ、前記発注データベースに記憶された注文伝票のうち、前記ステイタスが「待機」から「処理可」に変更された売買注文に対応した注文伝票を読み出して、前記注文伝票の内容に基づく売買注文を前記取引市場システムに
発注する売買システムと接続されていて、
前記顧客側端末に表示された前記発注画面において前記必要項目入力欄に入力された前記必要項目を含み、さらに、前記条件指定欄に条件が指定された場合には前記条件が、前記トリガ項目指定欄にトリガ項目が指定された場合には前記トリガ項目が含まれた、前記売買注文の売買条件を、前記顧客側端末から前記コンピュータネットワークを介して受け付ける売買条件受付手段と、
前記売買条件受付手段が受け付けた前記売買注文の売買条件に、前記トリガ項目が含まれている場合には、前記必要項目から前記売買注文に対応した注文伝票を作成し、前記注文伝票を前記売買システムに送出する注文伝票送出手段と、
前記売買条件受付手段が受け付けた前記売買注文の売買条件に、前記トリガ項目が含まれている場合には、前記トリガ項目から前記トリガ条件を作成し、前記トリガ条件を前記売買注文に対応付けて記憶するトリガ記憶手段と、
前記トリガ記憶手段に記憶されたトリガ条件が満たされたか否かを監視して、満たされたと判定すると、前記売買システムに対して、前記トリガ条件が満たされたと判定された売買注文に対応した注文伝票に付された前記ステイタスを、「待機」から「処理可」に変更するための指示信号を送出する発注処理指示手段と、
前記売買条件受付手段が受け付けた前記売買注文の売買条件に、前記トリガ項目が含まれていない場合には、前記売買条件に含まれる前記必要項目を、前記取引市場システムへの回送指示信号と併せて、前記売買システムに送出する売買指示手段と、
を備えること、
を特徴とする売買注文自動発注装置。

なお、カブドットコムは、その他にもW指値特許(特許3754009)や+-指値特許(特許3734168, 特許4076512)といった株の注文方法の特許を保有しています。

同社は取得特許を会社のホームページに載せて周知するなど、積極的に知財を活用していることが伺えます。



ビジネスモデル特許の出願動向

補足として、ビジネスモデル特許の出願動向を紹介しておきます。

 

特許庁のサイトで、ビジネス関連発明の特許についてのレポートがあげられています。

ビジネス関連発明の最近の動向について

 

上記のレポートに載っている、ビジネス特許の特許査定率の推移のグラフです。

ビジネス特許の出願動向

 

実は、一昔前だと、「ビジネスモデルは特許が取れない」というのが特許業界では定説でした。

事実、ビジネスモデル特許ブームに湧いた2000年代前半は、特許査定率が10%程度しかなく、過去においてその認識は正しかったのです。

 

しかし、その後、特許査定率が上がり続け、2014年には特許査定率67%にまで達しています。

従って、現在においてビジネスモデルは、その他の技術分野とも比較しても遜色がないくらい特許が認められているのです。



まとめ

というわけで、ビジネスモデル特許について代表的なものや出願動向をご紹介しました!

 

ポイントをまとめますと、以下のようです。

  • ビジネスモデル特許においては、発明該当性(特許法上の発明に該当するか?)がポイントとなる
  • ビジネスモデル特許の具体例としては、いきなりステーキ特許、freeeの自動仕訳特許、Amazonのワンクリック特許などが挙げられる
  • 2000年台前半はビジネスモデルにはほとんど特許は認められなかったが、近年では70%ちかく特許査定になっている

 

結論として、いきなりステーキ特許に象徴されるように、現在はビジネスモデル特許は非常に成立しやすいといえます。

今後どんなものが出てくるのか楽しみではありますね!