弁理士に将来性はあるのか?今後の需要を左右する要因とは?

知財業界で仕事をする人間であれば、弁理士という資格を意識しない人はいないでしょう。

特許事務所に勤める人はもちろん、企業の知財部門等で働く人も、「弁理士資格を取ろうかな?」と考えたことがある人は多いのではないでしょうか?

 

しかし、弁理士は国家資格の中でも最難関クラスで、資格取得までにはそれなりの費用と膨大な勉強時間が必要です・・・。

 

では、がんばって弁理士資格を取ったとして、弁理士に将来性はあるのでしょうか?

この記事では、弁理士という職業が今後どうなるのかについて、私なりに考えてみたいと思います!

 

弁理士の今後を左右する要因

弁理士の今後を左右する要因としては、

  • 国内出願件数
  • 弁理士数数
  • AI

があります。

 

国内出願件数は弁理士の需要に相当し、弁理士数は需要に対する供給に相当します。

また、将来的なAIの発展によって弁理士の仕事が代替される可能性もあるかもしれません。

順に見ていきましょう。

 

国内出願件数(需要)

弁理士は日本における特許出願等の知財手続きの代理を行う資格。

従って、弁理士の仕事のパイの大きさ(需要)は日本国内の出願件数に左右されます。

 

では、弁理士の仕事に占める比率が高い特許について、出願件数はどのように推移しているでしょうか?

国内特許出願件数推移

出典:特許行政年次報告書2018年版

上のグラフのように、日本国内の特許出願件数は年々減少していっていることがわかります。

2008年から2017年までの10年間で20%近くも減少しました

 

なぜ日本の特許出願件数が減少しているのか?

おそらくは、世界における日本のマーケットとしての魅力が低下しているのと、特許権の威力(特許権者の勝率や損害賠償額)が高くない、というのが要因でしょう。

このことは、日本とは対照的に、米国や中国の特許件数が増加し続けていることからも明らかでしょう。

 

日本の人口は減少傾向に転じており、今後の経済成長の余地がないとすると、日本の特許制度が大改革されない限りは(例えば、米国のようにディスカバリーや懲罰賠償制度が導入されるとか)、今後も出願件数の減少が続きそうです。

 

弁理士の数(供給)

弁理士の将来を占う上で、弁理士の数も重要!

市場にどれだけ弁理士が供給されているかで、弁理士業界の競争の激しさがわかります。

 

弁理士会の資料によれば、弁理士の数は2018年3月時点で11,185人
出典:会員分布状況(日本弁理士会)

その数の推移は以下のようです。

弁理士数の推移

出典:弁理士白書(日本弁理士会)

上記のグラフから、弁理士試験が易化した2000年以降に、急激に数が増えていることがわかります。

ここ数年は、弁理士試験の最終合格者数が300人を割るなど、一時期に比べると弁理士の増加スピードは落ちていますが、すでに相当な人数の弁理士が市場に供給されているという状況

昔に比べると弁理士の希少性は無くなってきていると言えそうです。

 

AI

少し前に、「弁理士はAIに代替される可能性が92.1%である」というようなニュースが話題になりました。

 

結局のところ、専門家の間では上記の試算は信憑性が低いと考えられているようですが、今後のAI技術の発展に伴って弁理士の仕事の一部がAIによって代替される可能性は十分ありそうです。

 

AIは弁理士の敵か?代替されない知財の仕事とは?」という記事で詳しく書いたのですが、私としては、弁理士の本来的業務である特許明細書の作成などの書面作成業務は、トータルの業務量や単価は減少する方向になると考えています。

一方で、発明発掘や特許出願戦略の策定などの、本来企業側で行っていた仕事のアウトソース先としてのニーズがより高まり、書面作成業務に対するそれらの業務割合が増えて行くのではないかと思います。

 

現時点において、AIによって弁理士の仕事がどれほど奪われるかは未知数ですが、少なくとも求められる弁理士の仕事や役割は大きく変わっていきそうです。

 

弁理士の将来性:明るくはないが真っ暗でもない?

というわけで、弁理士の今後に影響を与えそうな要因を見ていきました。

まとめると、

  • 国内出願件数は年々減少
  • すでに市場に相当な数の弁理士が供給されている
  • AIにより弁理士の仕事が代替される可能性

ということで、弁理士の将来にとってあまり明るい話題はありませんでした・・・。

 

上記を鑑みると、少なくとも、弁理士資格の本来的な意義である代理人業務には、あまり明るい未来は無いような気がします。

パイは減る一方で弁理士はどんどん増えていくわけだから、今後さらに競争が激しくなるのは必至でしょう。

 

しかし、弁理士の約半数が企業または特許事務所に勤務している会員分布状況(日本弁理士会))、という現状を考えると、弁理士資格の意義は単に「代理人業務ができる(独立できる)」というだけではなさそうです。

 

例えば、「知財部員が社内弁理士になるとこんなメリットが?!」という記事で書いたように、企業知財部の人が弁理士を取ってキャリアに箔をつけたり、開発者や研究者が弁理士を取ってキャリアチェンジのきっかけにする、という意義は今後もあり続けるのではないでしょうか?

 

知財関係の資格として弁理士は最高峰であり、法律知識や思考力の証明として今後も機能し続けることでしょう。
(他の資格として知的財産管理技能士もありますが、やはり弁理士ほどの知名度ではありません。)

もちろん、将来においても、弁理士資格を取って独立して新興の特許事務所として名をはせる!という余地もまだ無くはないでしょう。

 

総じて、「弁理士資格を武器にキャリアを切り開いてやろう!」という意欲と実力がある人にとっては、弁理士の将来は明るいと思っています。

 

というわけで、私としては、「弁理士に将来性はあるのか?」という問いに対しては、

弁理士の将来は明るくはないけど、悲観するほど真っ暗でもないよ

と答えますかね(笑)

 

なお、AI時代に求められる弁理士(知財)の仕事について「AIは弁理士の敵か?代替されない知財の仕事とは?」という記事に書いています。
弁理士の将来性という観点ではこちらもご参考に!

 

また、企業知財部の人など、特許事務所を開業しない人が弁理士資格を取るメリットついて、「知財部員が社内弁理士になるとこんな良いことが?!」という記事に書いています。