東芝技術流出の件で思ったこと

公開日: : 最終更新日:2016/11/26 時事ネタ , ,

最近ニュースになっている、東芝の技術流出の件をネタに、思ったことについてつらつら書こうと思います。

この事件の概要としては、

  • 東芝の提携先の企業(SanDisk)の社員がフラッシュメモリの研究データを持ち出した
  • その社員は、韓国のSKハイニックスに転職し、研究データを渡した
  • 東芝は不正競争防止法を根拠にSKハイニックスに対して民事訴訟を起こしており、また、その研究者は不正競争防止法違反により刑事告訴されている

というものです。

 

報酬の引き上げで技術流出が減るか?

このニュースに関連して、電気工業会会長の人が技術流出を懸念していることについての記事がありました。

「優秀な技術者の処遇検討を」電機工業会会長が流出懸念

この記事の中で、会長さんが技術流出の防止策について言及しています。

稲村会長は会見で、「データ管理の徹底など対策は各社で取っているが、技術者の頭の中(の情報など)までは管理出来ず、技術流出を百%防ぐのは難しい」と指摘した。技術者が身につけた経験や知識を転職先で生かすこと自体は規制できないためだ。そのうえで「優秀な高齢の技術者の処遇は業界として考えないといけない」と述べた。

このコメントが引っかかりました。

技術流出の対策として、優秀な技術者の処遇を良くするということなんですが、これってなんか的外れな気がします。

というのも、会社の技術情報を持ち出して他社に売り込むような人は、大して優秀ではない人だと思うからです。

優秀な人であれば会社ではなく業界における自分の評価を気にするはず。
そうすると、営業秘密の持ち出し・売り込みは、業界における他人からの信頼を毀損させる行為に他ならないので、優秀な人間が自分の名前を貶めてまでやるメリットが無いと言えます。

だから、本当に対策するべきターゲットは、優秀な技術者ではなく、その下のイマイチな人たちだと思います。

このような人達は、イマイチであるが故に会社からも良い待遇を受けられないので、不満が溜まりやすく、おそらく業界における自分の評判など気にしないでしょうから、モラルを欠いた行動を起こしやすいのではないかと。
このような人達に対して、外国企業などが高額な報酬をちらつかせると、すぐに食いついてしまうわけです。
(そして、人としての価値は低いから、情報を抜き取られるとすぐ切られる)

じゃあ、技術流出を防止するためのアイデアを持っているかと言われると、なかなか思いつかないですねぇ。
やはり、不正競争防止法上の罰則を強化するのと、技術者に対するモラル教育を行うっていうところでしょうか。
それから、機密情報にアクセスできる人間をこれまで以上に厳選するということも必要だと思います。

 

何故特許が使われない?

話は変わりますが・・・、
この事件についてニュースを見ている時に思ったのですが、なんで特許の話が出てこないんでしょうか?
東芝は不正競争防止法を根拠にハイニックスを訴えていますが、技術にからむ話なら特許が使われてしかるべきです。

で、ここからは完全に憶測になるのですが、いくつか可能性が考えられます。

  • 韓国やその他の外国に特許出願してなかった
    例の技術者は工場で研究データを入手したということなので、そのデータは製造技術に関するものである可能性が高いのではないかと思います。
    基本的に、製造技術に関する発明は、検証性(侵害発見のしやすさ)が低いことが多く、あまり積極的に特許出願されないことが多いです。
    (この場合、ノウハウ(営業秘密)として社内で管理されることになります。)
    この件の発明も、製造技術に関するものだったため、特許出願されなかった、あるいは、日本出願のみで外国出願は行われなかったのではないかと。
  • 特許を回避されてしまった
    特許は出願されていたんだけど、SKハイニックスが改良・設計変更をしたため、特許が回避されたというのも考えられます。
    大企業ともなると研究成果に対しては必ず特許出願するものなので、そのまま研究データを使って製品を作ると特許侵害になる可能性が高い。
    だから、研究データを参考にしつつも、SKハイニックスが独自の改良・設計変更を行ったのではないかと思います。
  • 特許訴訟を検討中
    まだアクションが起こされてないだけで、水面下では特許訴訟が検討されているのかもしれません。

最後に

とりとめもなく書いてきましたが、終身雇用が崩壊しつつあるご時世ですから人材の流動化はさらに進行しそうで、技術流出の問題は今後も一層大きくなりそうです。
政府の方でも、営業秘密の保護についての新法を検討しているというニュースもあり、色々と動きが出てきそうですね。

自分がいるIT業界ではすでに人材の流動化が相当進んでいることもあり、営業秘密関連のニュースについては今後もウォッチしていこうと思います。

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