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書評(知財本)

明治の特許維新

投稿日:2014/05/21 更新日:

明治の特許維新  外国特許第1号への挑戦!
櫻井 孝
発明協会
売り上げランキング: 524,571

特許の歴史について書かれた本を紹介します。
明治の特許維新  外国特許第1号への挑戦!」。
著者は、櫻井孝氏で、特許庁の審査部長をされている方です。

本書は、日本における特許制度の黎明期である明治時代にフォーカスして、特許に情熱をかけた人たちのエピソードを紹介した、特許の歴史についての本です。

 

初めて米国特許を取得した日本人とは?

第1章で紹介されているのは、日本人として初めて米国特許を取得した人物についてです。

その名を、平山甚太。
横浜の花火製造会社である平山煙火の経営者であった人物です。
彼は昼花火についての発明をアメリカに特許出願し、結果的にそれが日本人の米国特許第1号になるのですが、本書では、平山が米国特許出願から特許を取得するまでの紆余曲折を詳細に紹介しています。
特許という概念すらほとんど知られていない時代にあって、海外での事業展開を見据えて米国出願を行ったという平山甚太の先見性に驚かされました。

第2章は、日本人で初めて英国特許を取得した人物についてです。
西川虎之助という人物で、液化ガスを用いた機械についての発明で特許を取ったそうです。

そして第3章では、日本における特許制度がいかにして制定されたかについて、主に外国人の特許出願の受け入れという観点から、その経緯が事細かに書かれています。

その流れをかいつまんで紹介すると・・・、

  • 明治4年に日本初の特許法(専売略規則)が制定。→翌年廃止
  • 明治18年、専売特許条例が施行。この段階では、実質的に外国人は出願適格性が無い。
  • アメリカ、イギリス、ドイツなどと条約締結に向けた交渉。(特許等についての内国民待遇などが盛り込まれる)
  • 明治30年、日本での外国人特許の第1号(アメリカ人)が成立。

という感じになります。

諸外国と条約が締結され、外国人の特許出願が受け入れられるようになるまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
条約の文言を巡っては国内でも様々な議論があったし、さらには条約交渉の際に外交官が暴走して条約の内容が日本政府の思惑と離れてしまったりして、本当に紆余曲折があったんだなということが分かります。

そして、特許制度の制定というのは、当時の外交上の重要問題だったんですね。

 

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特許というスコープから明治時代を覗き見る

本書を読んで、特許の歴史を解明しようとする著者の並々ならぬ情熱を感じました。
巻末の、筆者が平山甚太の人物写真を特定するに至ったエピソードなど、本書がいかに筆者の粘り強い調査と取材に基づくものであることをよく表しています。

ほんと、よくここまで調べたものです!

 

それから、本書を読んでいて、明治時代の熱気というのを感じました。

明治時代というのは、国の制度やインフラが未整備で国として未熟であった反面、チャンスに溢れた時代でもあったというイメージです。
そんな時代の中、本書で紹介される人たちは、産業上の成功、あるいは日本国の発展のために、必死になって自分の成すべきことに取り組んでいたのでしょう。

本書は、そんな男たちの生き様や熱気にあふれた明治時代の様子を、特許というスコープを通して覗き見ることができるのです。

 

余談ですが、前にJIPAか何かの会合で著者の櫻井氏の講演を聞いたことがあります。
その際に、実際の平山花火の写真を見せてもらったり、アメリカで昼花火を再現した話などを聞かせてもらったりしました。
(櫻井氏、相当話し上手でした。)

近々、本書を出してから新たに分かった事実についての論文が知財管理誌に載るそうなので、楽しみにしましょう(笑)

明治の特許維新  外国特許第1号への挑戦!
櫻井 孝
発明協会
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  1. はちみつ より:

    The 知財部員が往く!のときからブログを拝見していましたが初コメントします。

    化学系のバックグランドから電機の知財に新卒入社で、入社年次も近いので勝手に親近感を感じ色々と参考にさせて頂いていました。

    私もUMEさんのように情報発信したくブログを始めましたが見事に三日坊主。。。長く続けられていて尊敬します。

    よろしければお時間あるときにメールアドレスの方に連絡頂ければ幸いです。

    • UME より:

      はちみつさん

      コメントありがとうございます!

      そう言って頂けると励みになります。

      遅くなって恐縮ですが、メールを送りました。

      今後ともよろしくおねがいします!

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