知財担当者は提案書にどの程度労力をかけるべきか?

公開日: : 最終更新日:2016/11/26 特許実務メモ , , , ,

今回は、ちょっと実務的なネタで記事を書こうと思います。

多くの企業では、特許出願をする際には、特許事務所の弁理士に特許明細書の作成を依頼すると思います。
その場合に、大きなテーマだと個人的に考えているのは、

特許出願のための資料(発明提案書など)に、どの程度知財担当者が労力をかけるか?

ということです。

究極的なゴールは、その発明を十分に保護できる明細書を作ってもらうために弁理士に出来る限りのサポートをする、ということですが、とはいえ、1つの案件に無尽蔵に時間をかけることはできないというアンビバレントな状況にあります。

転職して今の会社で仕事をするようになって、特許事務所に明細書の作成を依頼する機会が非常に多くなったのですが、このことについてはよく考えます。

経験上、上記テーマについては、いくつかの要因によって最適解が異なってくるというのが実感です。

 

いくつかの要因

発明者が発明提案書を作ってくれるか?

発明者が発明提案書を作ってくれる場合、知財担当者はそれなりに負担が減ります。
発明者が書いた提案書を事務所に送りつけるだけで事足りるかもしれません。

しかし、提案書の中身がわかりにくかったり、発明のポイントがちゃんと書けていない場合は、知財担当者がある程度手を入れないと、明細書の質に影響が出る可能性があります。

また、そもそも発明者が提案書を作らないというケースもままあります。
その場合は、知財担当者が何らかの資料を用意しなければならず、労力がかかります。

 

発明自体の特性

発明の重要度によって、がんばって作ったり、手を抜いたりという労力のかけ方が変わってきます。

また、発明が難解な場合は、弁理士にちゃんと理解してもらうために、より丁寧な資料を用意する必要があるでしょう。

 

担当者の時間的リソース

単に発明者から上がってきた提案書を右から左へ流すだけだと、知財担当者としてのバリューがなくなってしまうので、何らか付加価値を付けたいところではあります。

例えば、どういう権利範囲で特許を取りたいのか、というのは知財担当者が付加価値を付けやすい(というかつけるべき)ポイントです。

発明者にとって権利範囲を適切に設定するのは難しいし、弁理士であっても本当にその企業に適切な権利範囲でクレームを作ってくれるかはわかりません。

ここは、知財にある程度詳しく、且つ企業の事業戦略等を理解している(であろう)知財担当者の腕の見せどころです!

とはいえ、クレームをドラフトしたり、がっつり中身を書いたりすると、他の件にかける時間がなくなってしまうので、そこはバランスですね。

 

弁理士の能力や好み

当たり前ですが、やはり明細書を作る弁理士の実力がアウトプット(明細書の質)に一番影響がでかいです。
もし、超実力のある弁理士に依頼できるのなら、全く資料を用意せずに発明者がその場でちょこちょこっと説明するだけでも、しっかりした明細書を仕上げてくれたりします。(実際にそういうすごい方がいらっしゃいます)

とはいえ、常にそのような先生に依頼できるとは限らないし、やはりその場で説明だと一発勝負になってリスキーです。

一方、言わずもがなですが、弁理士の実力が「?」だとイマイチなものが上がってくる可能性がかなり高い。

 

というわけで、提案書によって明細書の前提となる材料を目に見える形で提供することによって、ある程度リスクをコントロールすることが重要なわけです。
このとき、提案書をどの程度書き込む必要があるか(紙ペラ一枚なのか、明細書に近いようなかんじでがっつり書くのか)は、当然弁理士の実力に依存することになります。

 

あと、弁理士によって、かっちりした提案書を好む方とそうでない方がおり、意外と好みが分かれる傾向があるように思います。

弁理士によっては、下手に提案書を書かれるとそれに縛られて明細書が書きにくくなる、ということをおっしゃられている方もいました。

 

自分が意識していること

というわけで、上で述べたような諸々の状況により、どの程度提案書作りに労力をかけるかが左右されるわけですが、自分としては、少なくとも以下の点には最低限労力をかけるようにしています。

  • クレームのポイントを書く
  • 変形例を充実させる

クレームのポイントを書くのは、上で述べたように、知財担当者にはどういう形の権利を取りたいかを明らかにする責任があると思うからです。
一方で、あんまりかっちりしたクレームを作っても、先生が創作能力を発揮する邪魔になってしまったら良くないので(あと時間がかかるので)、あくまで箇条書きでポイントを挙げるに留めておくことにしています。

また、変形例は、弁理士の方で創作するのは結構ハードルがあると思うので、できるだけこちらで充実させることにしています。

 
最近の自分の場合、上の2点は抑えつつ、いかに労力をかけずに最大のアウトプットを得るか?というところを突き詰めているのですが、たまに力を抜きすぎて後悔することもあったりして、難しいところです。

引き続きうまいところを探っていかなければなぁと思っています。

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Comment

  1. yy より:

    久しぶりに記事の更新ですね。
    多少コメントを。
    ・発明者はクレーム解釈とか、権利侵害の最新の動向について、知らないと思うので、アイデアの説明でよいのではないでしょうか。明細書はやはり知財サイドでしょうね。

    発明自体というか、保護の対象について、出願から20年先までどう考えるかにより発明自体の扱いが変わるのではないでしょうか。

    担当者のリソースについて、知財の成果をどう考えるかによるけど、活用できる権利の数が少ないので、それなりに時間を掛けても良いと思います。
    活用できない出願に時間を掛けてもどうなんでしょうかね。

    弁理士の先生の経験と依頼件とがマッチすれば、良いですが、そうでないとしたら、どうなんでしょうか。

    権利保護の対象について、配慮があれば、特に問題はないと思います。 発明を純粋に極めても、事業化しなければ、意味がないですよね。

    では。。

    • umegreat より:

      yyさん

      コメントありがとうございます。
      有望な発明に労力を集中させることができれば理想なのですが、経験上、出願前から活用できる発明を見抜くことは難しいと感じています。
      標準関連発明などであればある程度狙いうちできそうですね。

      先生が慣れている発明かというのも確かに影響しますね。
      だいたい同じ技術分野のものを固めて依頼することが多いです。

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