知財業界のキャリアプラン

理系社会人が弁護士を目指すイメージ

弁理士と弁理士試験のブログを運営されているドクガクさんから、弁理士の日(7月1日)を記念するための企画として、「知財業界のキャリアプラン」について記事を書かないかとお声掛けを頂きました。

そこで今回は、この「知財業界のキャリアプラン」というテーマで記事を書きたいと思います!

 

本記事では、知財業界と言われる仕事にはどのようなものがあるのかを挙げた後、知財業界のキャリアパスの類型について書いてみようと思います。

なお、以前このブログで書いた記事との重複も多いかと思うので、そのへんはご容赦ください。。

 

あらためて自己紹介

今回の企画で初めてこのブログを見て下さる方もいると思うので、まず、自己紹介がてらに自分のこれまでのキャリアについて簡単に書いておきます。

 

私は大学で化学を専攻し、大学院で薬品合成系の研究室に入りました。

大学院在学中に弁理士の試験に受かりました。

その後、新卒で大手メーカーの知的財産部に入り、そこで約5年間、材料分野の特許権利化を担当。

一昨年、IT企業の法務部に転職し、そこで発明発掘や特許権利化を中心に会社の知財業務全般を担当しています。

 

やはり新卒採用時の就活や転職の時などに、否が応にも自分のキャリアをどうするか?ということについて考えさせられました。

ここらへんについては別途記事を書いていますので、もし興味があれば併せてそちらもご参照ください。

知財部の新卒採用のイメージ 知財部に新卒で入れる企業はどこ?就活生が知っておくべきこと ハイクラスエージェントのイメージ 知財部への転職はなぜ難しいのか?【採用担当者が理由を解説します】

知財業界って?

知財の仕事のイメージ

まず、知財業界のキャリアプランを考える前提として、知財業界とはどういう仕事・どういう組織を指すのでしょうか?

以下に私が思いつく限り挙げてみました。

  • 特許事務所 or 法律事務所の弁理士、特許技術者、スタッフ
  • 企業の知財部、知財担当者
  • TLO
  • 知財業務サポート系の会社(特許翻訳会社、特許調査会社、特許管理・解析ツールのベンダー)
  • NPE関連(パテントトロール、パテントアグリゲータ、特許流通会社など)
  • 公的機関(特許庁、WIPO、JETROなど)
  • その他もろもろ(会計事務所での知財評価、知財コンサル、知財系の大学教授、講師etc….)

 

知財業界というのは、上記の仕事や組織に関する人々で構成される社会のことであり、知財業界におけるキャリアパスというのは、上で挙げたような組織を行ったり来たり留まったり、あるいは自分で起こしたりすることだと言えるのではないでしょうか。



知財業界のポピュラーなキャリアパス

キャリアのイメージ

知財業界のキャリアパスについて、もう少し詳しく見てみましょう。

知財業界のキャリアパスには、いくつかポピュラーな類型があるように思われますので、以下に挙げてみます。

ただ、いくら知財業界内と言えども、キャリアパスは人それぞれで簡単に一般化できるものではなく、かなり大雑把にまとめたものなので、そこ辺はご容赦ください。

 

特許事務所の弁理士をゴールにする

知財業界のキャリアの王道パターンは、特許事務所に移り、弁理士としてガンガン稼ぐ!だと思います。

企業の知財部や開発にいた人が在職中に弁理士試験に受かって、特許事務所に転職するというのはよく聞く話です。

また、事務所→事務所の転職は、言わずもがなで非常に多いです。

あと、特許庁の審査官または任期付審査官が、長年の勤務の後に弁理士資格を取って特許事務所に雇われるというパターンも相変わらずありますね。

 

基本的に、特許事務所では実力が収入に直結する世界であり、とにかく明細書を書く力が必要だと言えます。

明細書を書く力がある人は、どんどん案件が舞い込んできて、その分多くの報酬を得ることができます。

また、新たに特許事務所を開業する場合も、最初は自分の実力だけで客を取ってくる必要があります。

言うまでもなく、実力とは明細書を書く力です。
(+コネや営業力などがさらに求められます)

明細書を書かないでも大丈夫なのは、ある程度の規模の事務所の所長さんくらいではないでしょうか(笑)

 

なお、弁理士としてキャリアプランをどうしたらいいかについては、「弁理士の理想的なキャリアパスを考えてみた|独立開業がいちばん?」で詳しく書いているので、こちらもご参考に。

弁理士はやめとけのイメージ 弁理士の独立開業のためのキャリア論

 

知財部のトップを目指す

企業の知財部に入り、会社内でがんばって出世する、というのも代表的なキャリアパスではないでしょうか。

知財部員の多くは、新卒で知財部に入った人か、元技術者で開発部門から異動してきたという人です。

あと、最近では、特許事務所から企業知財部に転職してくる人も相当数いると聞いています。

また、他社の知財部から転職して来る人もいます。

 

諸々の経緯を経て知財部に入った人は、ゆくゆくは知財部の上の方の役職になれるように、日々の仕事をがんばることになります。

しかし、出世というのは、めぐり合わせの部分も大きいため、自分の実力だけでは如何ともし難いところがあり、上の目指す人にとってはそれはリスクだと思います。

一方、自分はそこそこでいいやという人にとっては、比較的雇用も安定しているので、企業はいいですね。

 

知財業界の新天地へ

ほんの一昔前までは、知財のキャリアといえば、特許事務所、企業知財部のどちらかで完結していました。

しかし、近年では新しい形態の知財ビジネスが立ち上がっており、事務所や知財部で経験を積んだ人が、そのような新天地を目指すというキャリアが検討されるようになりました。

いくつか例を挙げてみます。

 

知財コンサル

まず、新しい形態の知財ビジネスとして、知財コンサルが挙げられます。

知的財産(主に特許)に関するコンサルティングを行うというものです。

知財コンサルを専門にやっている会社は私の知る限り数が少ないですが、あることにはあります。

ただ、まとまった組織よりも、どちらかと言うと、長年企業の知財部を勤め上げた方が第二の人生として、個人事業として知財コンサルを始めるというケースが多いんじゃないかと思います。

 

それから、戦略コンサルやシンクタンク等で知財関係の仕事(知財戦略の立案や調査)があると聞いたことがあります。

また、最近では、特許事務所でも知財コンサルを副業としてやるところが増えてきていますね。

 

ただ、コンサルといっても何をもってコンサルというのかという議論があるところでして、多くは、発明発掘などの特許出願コンサルに終始することが多く、根本的な特許戦略にがっつり入ってコンサルをやるというのはレアなんじゃないかと思います。

それから、知財コンサルはどうしても知財まで手が回っていない中小企業がクライアントの中心になるため、高額なFeeを取ることが難しく、それ単体のビジネスとして成立し辛いという問題があります。

逆に、そこでしっかりしたビジネスが確立できれば、かなりかっこいいと思います。

 

NPE

次に挙げられるのが、いわゆるパテントトロールやパテントアグリゲータ、特許流通会社などに行くというキャリアです。

最近では、NPEとかPAEとかいう括りで呼ばれているところです。

日本企業などではNPEは目の敵にされていますが、アメリカではこのような業態の組織が数多く存在すると聞きます。

 

ただ、なかなか日本ではビジネスが成立しがたいところがあって、日本発のNPEはあまり聞きません。

ありがちなケースとしては、企業の知財部で長年勤め上げた方が、米国系NPEの日本オフィスのトップになるといった流れです。

 

TLO

それから、TLOが挙げられます。

TLOでは、大学の研究で出た発明を企業に売り込むのが主な仕事です。

従って、営業的スキルが求められますし、あと大学教授と良好な関係を維持するための特殊なコミュニケーションスキルも求められるそうです。

そのため、事務所や知財部などとはかなり毛色が違う仕事という印象です。

(その割に、事務所や知財部出身の方が多いようですが)



最後に キャリアプランをどう描くか?

弁理士を目指すイメージ

というわけで、知財業務にはどんなキャリアが考えられるのかというのをざっと書いてきました。

皆さんはどのようにお考えでしょうか?

 

私については、なんとなく将来的には知財の新ビジネスに関わることができたら面白そうだなぁと考えていますが、それ以上のことは固まっていません。

今は、とにかく色々な経験を積んで実力をつけるべきときだと思っています。

幸いにして、今の環境では知財に関することなら何でも仕事が降ってくるので、このチャンスを最大限に活かしたいです。

そして、いつか思わぬ転機が訪れたときにチャンスを掴めるようになりたいです。

 

最後に。

自分のキャリアを決めるにあたって意識していることがあって、それは「自分で可能性を潰さない」ということです。

通常、人はこれまでやってきたことの枠組み(例えば、大学時代の専攻や今の仕事内容)の中で考えてしまいがちですが、それでは可能性を見逃したり潰したりすることになってしまうのではないでしょうか。

だから、新しいキャリアを決める際は、その枠組みから少しでも出てみることが重要だと思います。

枠組みから出たところに大きな可能性が眠っているかもしれないからです。

私は過去の就活や転職で、自分なりにこのことを意識して活動してきましたし、これからもそうしたいと思っています。

 

この記事が、知財業務のキャリアプランを考える際のヒントになれば幸いです。

 

なお、知財業界の転職について興味がある方は下記の記事もご参考に!

弁理士口述試験のイメージ 知財・弁理士の転職エージェントおすすめ6選|体験談も紹介します ハイクラスエージェントのイメージ 知財部への転職はなぜ難しいのか?【採用担当者が理由を解説します】 ハイクラス転職にチャレンジするイメージ 【弁理士の転職】企業知財部に移るときの成功のポイントは?

8 Comments

ドクガク

企画に御参加頂きありがとうございます。

記事自体は昨日拝見させて頂いたのですが、
コメントを残すことができませんでしたので、
再度訪問させて頂きました。

さて、以前の私は事務所弁理士になることをゴールと考えていたのですが、
今では、これが通過点だったのだなと思っています。
会社にいたときは、自然とレールが引かれており、
そこから脱線することはないと感じて(当時は分からないままも)いました。
ところが、事務所はそうではない。
自分でレールを引く必要があると強く感じています。

可能性をつぶさないように、これからも挑戦し続けたい、そう改めて思わせて頂ける記事でした。

来年の御参加もよろしくお願い致します。

umegreat

コメントありがとうございます!

私は事務所で働いた経験は無いのですが、なんとなくおっしゃることはわかるような気がします。

企業にいれば自分でキャリアについてあれこれ考えなくても、
とりあえず目の前の仕事をこなしていればやっていけるところがあります。
事務所に入るということは自分の実力でやっていくということだから、
真剣に自分でレールを引く必要があるのでしょうね。

来年も是非よろしくお願いします!

yy

こんにちは。。
最近、知財で名をなした人の話を聞きました。
その話を無条件に受け入れれば、実現するのに、
それなりの努力と能力と、運が必要かと思いました。
そこで、限界を設定するのは、どうかと思いますが、
自分にとって、居心地の良い目標設定も当然かなと
改めて思いました。
知財の本を見ると、ついつい身の程知らずの夢を抱きますが、自分を振り返れば、無謀なキャリアプランになってしまいそうです。
その意味では、自分なりのプラン、ちょっと背伸び下プラン、大いに背伸びしたプランとかを意識した方が良いのかなと改めて思いました。
umeさんの理念、目標、実現手段がどのようなものか知りませんが、振り返ったとき、良かったなという風になれば、良いなと願っています。
では。。

umegreat

yyさん

コメントありがとうございます。

「自分なりのプラン、ちょっと背伸び下プラン、大いに背伸びしたプラン」というのはいい考え方ですね。

自分は小さくまとまってしまう傾向にあるので、大いに背伸びして色々考えようと思っています!

you

はじめまして。

知財に関わる仕事をしたいと思い、情報を集めていたところこちらのサイトにたどり着きました。とても為になる話をたくさん書いてくださって、ありがとうございます。

これから弁理士試験にむけて勉強するつもりですが、こちらのエントリーを参考に、もっと先のことを今一度しっかり想像してみようと思いました。

ちなみに、未経験の弁理士が転職で外部から企業の知財部に入る例などはあるのでしょうか?

umegreat

youさん

コメントありがとうございます!記事がお役に立ったとのことでうれしいです。

ご質問についてですが、「未経験」というのが知財業務を全く経験していないことだとすると、そのような例はあまり聞いたことがありませんね。

企業が知財担当として転職者を採用する場合は、それなりの即戦力であることを期待して採用するはずなので、弁理士とはいえ、いきなり未経験者を採用することはハードルが高いです。
もし、未経験者が企業の知財部に入ることを目標にするのであれば、まず今いる会社の知財部に移れないか検討する、一旦特許事務所に入って経験を積んでから転職する、などの方法が良いと思います。

ご参考になれば幸いです!

you

umegreatさん

お返事ありがとうございます!

やはり転職の場合、未経験者が直接知財部に入るのはあまり無い例なんですね。

書いてくださった、特許事務所に一旦入って経験を積むというキャリアパスが現実的そうです。

稚拙な質問で恥ずかしい限りです…まだまだ知らないことがたくさんあるので、こちらのサイトでお勉強させていただきます!

umegreat

youさん

もし聞きたいことなどありましたら、お気軽にコメント等頂ければと思います!

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