企業内弁理士になるメリットはあるの?【知財部員が実情を語ります】

社内弁理士のイメージ

弁理士は理系に人気の資格ですが、弁理士試験に合格するまでには、それなりの費用と勉強時間が必要になります。

(詳しくはこちらの記事参照)

 

では、それだけ苦労して取得した弁理士資格にはどんなメリットがあるのでしょうか?

たしかに弁理士を持っているとカッコいいのは分かるけど、具体的なご利益って何なのよ?!

というわけですね。

特に企業に勤務する弁理士は、特許事務所に勤務する場合と比較すると、なかなか弁理士であることの意義が見出しにくいのが実情です。

 

というわけで、この記事では、特に企業の知財部員の立場から、弁理士資格を取ることのメリットについて書いてみたいと思います!

 

ちなみに、これを書いている私は学生時代に弁理士資格を取り、新卒で企業の知財部に入って以来10年近く知財の仕事をしています。

まわりに弁理士の知り合いも多く、ある程度内情を知っているので、参考にして頂けると思います。

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弁理士資格を取るメリットは?

弁理士がオフィスに立ち寄るイメージ

まずは基本に立ち返って、弁理士資格があると何ができるのかを確認しておきましょう。

弁理士法上の資格の意義

弁理士法には、弁理士にできること、弁理士以外の人がやってはいけないことが定められています。

ちょっと長いですが、引用します。

(業務)
第四条  弁理士は、他人の求めに応じ、特許、実用新案、意匠若しくは商標又は国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許、実用新案、意匠又は商標に関する異議申立て又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びにこれらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務を行うことを業とする。

(弁理士又は特許業務法人でない者の業務の制限)
第七十五条  弁理士又は特許業務法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、特許、実用新案、意匠若しくは商標若しくは国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続若しくは特許、実用新案、意匠若しくは商標に関する異議申立て若しくは裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理・・・(中略)・・・を業とすることができない。

簡単に言えば、

  • 弁理士は知財手続きの代理をやりますよ(第四条)
  • 弁理士じゃない人は、お金をもらって知財手続きの代理をやっちゃいけませんよ!(第七十五条)

ということです。

これが法律上規定されている弁理士資格を取る意義になるわけですね。

独立や特許事務所勤務には明確なメリットあり

上でも述べたように、知財の手続きで報酬を得るには、弁理士資格が必要です。

なので、「これから独立して特許事務所を立ち上げたい!」と考えている人は当然弁理士資格が必要です。

 

また、独立はせず特許事務所に勤める場合も、クライアントの代理人という立場で仕事をすることになるので、やはり弁理士資格が必要になります。

なお、特許技術者として無資格でも仕事をすることはできますが、表には出ず裏方でひたすら明細書を書く場合がほとんです。

弁理士資格を持っていればクライアントと直に接するなど仕事上のやりがいが出ますし、待遇も良くなります。

 

一方で、企業の知財部など、特許事務所以外で働いている人にとっては、資格の意義は見えにくいです。

企業の知財部員の場合、弁理士じゃなくても、会社の中で知財業務をすることはできるわけで・・・。

実際、企業知財で働く多くの人は、弁理士資格を持っていません。

このような人たちには、弁理士を取ることでどのようなメリットがあるのでしょうか?

企業内弁理士の実情

企業知財のイメージ

企業の知財部などで働く弁理士は、企業内弁理士(または社内弁理士)と呼ばれます。

企業内弁理士の実態を紹介しつつ、企業で弁理士資格を持つことのメリットを考えてみたいと思います。

企業内弁理士の数

日本弁理士会の統計によれば、

弁理士全体のうち会社勤務の弁理士は約24%

だそうです。

ざっと弁理士の4人に1人は企業内弁理士である計算になりますね。

 

たしかに、大手企業の知財部ともなると、何十人単位で企業内弁理士がいたりします。

ちなみに、日立グループやパナソニックグループでは、100 名を超える弁理士が在籍しているそうです。

出典:国内外における企業内弁理士に関する統計と企業内業務の実態

私が昔勤めていた会社も30人近くは弁理士資格を持った人がいたと記憶しています。

 

ただ、こういった企業はそもそも知財部員の数が非常に多いので、それに伴って弁理士の数も多いのです。

私の感覚になりますが、おそらく、全知財部員に対する有資格者の割合は10%程度だと思います。

基本的に企業知財で働く人の多くは、弁理士資格を持っておらず、弁理士の有資格者は会社の中ではレアな存在なのです。

弁理士資格を取ってもいきなり待遇は変わらない

では、会社内において、弁理士の有資格者はどのような待遇を受けているのでしょうか?

これは企業によってスタンスが違うので一概には言えませんが、基本的には、

弁理士資格を取ったからといって、いきなり待遇が良くなったりすることはない

というのが実感です。

稀に、弁理士の登録料を補助してくれたり、資格手当を出してくれたりする会社もあるようですが、全体としては少数だと思います。

ちなみに、私が前にいた会社(大手メーカー)では、こういった登録料の補助が出ていたのは弁理士のごく一部(20〜30%)でした。

 

では、企業内弁理士の年収はどうかと言うと、

弁理士資格がダイレクトに年収に反映されることはない

というのが実情です。

企業では、弁理士だからといって特別扱いされることはなく、会社の基準に従い他の従業員と同じように評価されます。

もちろん、弁理士資格に裏付けられる法律知識や思考力などが評価されて、長い目で見て給与に反映される可能性はありますが、それはあくまで間接的な話。

基本は、資格の有無に関係無く、年次や能力、ポジションなどに応じて年収が決定されます。

 

なお、知財部員の年収については下記の記事で詳しく書いていますので、興味がある方はどうぞ。

年収のイメージ知財部の年収はどれくらい?|ポジション別に紹介します

それでも企業内弁理士になるメリットはある

弁理士合格のイメージ

そんなわけで、

企業では弁理士資格があるからといっていきなり待遇が良くなるわけではない

という話でした。

そうすると、企業勤めを前提とする限り、弁理士を取っても意味がないと思ってしまいますね・・・。

 

しかし、私としては、企業知財部であっても弁理士資格を持つことのメリットは存在すると思います。

具体的には、以下の3つがあると思います。

企業内弁理士になるメリット
  1. キャリアのチャンスが広がる
  2. 人脈が広がる
  3. 社内外から一目置かれる

1. キャリアのチャンスが広がる

個人的に一番のメリットだと思うのが、「キャリアのチャンスが広がる」ということです。

 

まず、知財業務未経験の人がキャリアチェンジをしたいという場合に役に立ちます。

弁理士を持っていることは、知財業務に必要な法律知識が備わっていることの証明になりますし、何より「知財をやりたい!」という本気度や熱意を示すことができます。

その結果、社内で知財部門への異動が叶ったり、あるいは特許事務所に転職できたりする可能性が高まります。

 

もちろん、すでに知財業務を行っている人についても、弁理士資格があることで、キャリア的なチャンスはさらに広がります。

まず、周囲から知財の専門家と見られるため、より高度な仕事が回ってくるチャンスが増えます。

高度な仕事ほど法律や判例の解釈、適用が必要になってくるためです。

例を挙げると、

  • 特許出願時の法律解釈が必要なイレギュラー案件
  • 共同研究や業務提携における知財の取り扱いの検討
  • 知財訴訟や係争への対応
  • 社内外での知財研修の講師

などです。

このような高度な仕事に取り込むことで希少な経験を積むことができ、それが評価されてさらに高度な仕事が回ってくる、という正のスパイラルが生まれます。

これは、キャリアの上で大きなアドバンテージになります。

 

それから、弁理士資格は転職の際にも役に立ちます。

特許事務所への就職は当然有利ですし、企業の知財部への転職でも弁理士を持っていることは一定以上の能力の証明として有利に働くでしょう。

 

また、消極的な理由ではありますが、昨今のような不安定な時代には、自分の意に添わず会社にいられなくなる可能性もあるわけだから(クビ切りとか)、リスクヘッジとして資格を持っておく意義はあると思います。

2. 人脈が広がる

巷では弁理士を対象とした勉強会や交流会があり、資格があることで、このようなコミュニティーに入りやすくなります。

このような機会に積極的に参加すれば、様々な企業や特許事務所などの弁理士と知り合いになることができます。

 

様々な立場の専門家と交流を持つことで、仕事への意識が高まりますし、おのずと知財に関する様々な情報が集まってきます。

従って、弁理士としての人脈から得られる情報や刺激によって一層のスキルアップが図れるというわけです。

 

これは別に弁理士でなくても本人の心がけ次第でできることですが、やはり相対的に見て弁理士資格がある方がこのような機会は増えますね。

3. 社内外から一目置かれる

やはり、弁理士資格を取るのは難しいので、資格を持っているだけで周りから「すごいな!」と思ってもらえます。

結果として、知財部内や他部門(開発や事業部)への発言力が高まるというメリットがあります。

 

また、社外の人と会う場合も、名刺に弁理士と書いてあれば「ちゃんと知財が分かる人なんだな」と思ってもらえるので、初対面からナメられることもありません。

特に海外の弁護士などは、日本人以上に、名刺に弁理士と書いてあるかどうかでその人がプロフェッショナルかどうかを判断すると聞いたことがあります。

私の経験 〜弁理士資格でチャンスが広がった

自分の経験でも、弁理士資格があることでチャンスが広がったなと感じたことがあります。

 

例えば、私は過去に知財コンサルティングという関東経済産業省のプロジェクトに参加したことがあります。

そのプロジェクトの参加者は、弁理士や公認会計士などの士業やビジネス経験豊富なプロフェッショナルの方々ばかりだったのですが、何故か、当時社会人になって間もない私が弁理士資格があるという理由でそのプロジェクトに参加させてもらえたのです。

その結果、あるベンチャー企業に対して知財面での支援をさせて頂くという貴重な経験を得ることができました。

何より、普通では知り合えないような方々と知り合いになることができ、すごく刺激を受けました。

 

その他には、当時勤めていた会社内の弁理士のコミュニティに入れてもらえて、色々とスキルアップをすることができましたし、転職にも成功することができました。

やはり、自分としては弁理士資格というものが自分のキャリア形成に大きく役立っていると感じています。

まとめ

というわけで、主に企業の知財部員の立場で、弁理士資格を取ることのメリットを色々と書いてきました。

中には、「弁理士のメリットってこの程度かよ・・・」と感じた方もいるかもしれませんね。

 

結論としては、弁理士資格を取る意義があるかどうかは、その人の意識次第だということです。

意識の高い人、つまり、資格を武器にガンガンのし上がってやろうという人は、がんばって弁理士資格を取るべきでしょう。

上で述べたように、資格を取ることで、人脈を広げたりキャリアアップができるような機会が確実に増えます。

さらに、事務所を開いて独立することも可能だし、新しいビジネスを立ち上げて資格から得られる信用、人脈、情報などを享受することもできるかもしれません。

 

一方、「資格を取って左うちわで暮らしたい!」とか考えてる人は、割に合わないから止めるべきです。

企業にしろ特許事務所にしろ、いくら弁理士資格があっても、資格を裏付けるだけの実務能力が無ければ決して良い待遇は受けられません。

昔に比べると弁理士試験合格者が増えているので、弁理士自体にそれほど希少性があるわけではないのです。

 

というわけで、弁理士試験の受験を検討している方は、一度弁理士試験に必要なコストとそこから得られるメリットを比較考慮してみることをおすすめします。

それでもし「弁理士を取りたい!」と思うのであれは、是非挑戦してみてはいかがでしょうか?!

弁理士を目指すには?

弁理士に興味を持って「目指してみようかな?」と思った方は、まずは以下の記事をどうぞ。

弁理士資格の概要や試験制度、登録までのプロセスなどを詳しく解説していますので、参考になると思います。

弁理士試験の始め方のイメージ【弁理士になるには?】知っておきたい知識と具体的な始め方を解説します!

 

弁理士になるための一番のハードルが弁理士試験に合格することです。

弁理士試験の最終合格率は例年7%前後と、国家資格の中でも最難関クラスと言われています。
(詳しくはこちらの記事を参照)

そのため、弁理士を目指す場合、独学で試験を突破しようというのはかなり無謀だと言わざるを得ません。

弁理士試験の受験ノウハウを持っている資格予備校を利用するのが合格への近道です。

実際、ほとんどの受験生は資格予備校の弁理士講座を使って勉強しています。

 

弁理士講座を提供している代表的な予備校として、下記のようなところがあります。

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弁理士講座を提供する全予備校の詳細や講座の選びのポイントについては下記の記事でまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください!

弁理士予備校のイメージ弁理士の通信講座を比較【2021年版】選び方5つの観点はこれ!

2 Comments

shin

はじめまして。弁理士の資格のことについて調べていて、このブログのことをみつけました。来年から企業の知財部に内定している情報系の大学院生です。

「弁理士資格ってとった方がいいのだろうか?」と考えていため、メリットやコスト、働き方に関する内容はとても助かりました。

ありがとうございます!

umegreat

コメントありがとうございます!お役に立ったとのことで幸いです。
企業の知財部に内定とのことでがんばってください!

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