知的財産管理技能士は、知的財産に関する実務能力を評価する国家資格で、知財関係者を中心に受験されています。
その中でも、知的財産管理技能士1級は、難易度が高く、かなりの実務的知識を要求される試験。
2級試験に合格してさらに上を目指したい人や、実務能力に腕の覚えがある人が受験します。
私も過去、2級試験に合格した後に、さらに上位資格にチャレンジしたいということで、1級試験(特許専門業務)を受験し、なんとか合格を果たしました。
そのとき感じたのは、
1級試験の試験対策をするのは難しい・・・
ということです。
特に、試験に関する情報が少なく、どういう教材を使って勉強したらよいかわからない、というところに苦戦しました。
というわけで、この記事では、知的財産管理技能士1級の勉強法やどんな教材を使ったらよいのかについて書いてみたいと思います!
(主に特許専門業務についての記事になります。)
本記事の内容
知的財産管理技能士1級(特許)の攻略法
知的財産管理技能士の1級試験ともなると、受験者は知財実務に腕の覚えがあるエキスパートに限られます。
合格率も、1級特許専業の学科試験で約8%とかなり低いです。
(知財検定の難易度や試験制度について、詳細はこちらの記事を参照のこと)
以下、1級試験の具体的な勉強の進め方を解説します。
知財検定1級のテキストは無い・・・
実は、知的財産管理技能検定1級は、試験対策の参考書がかなり少なく、市販のテキストすら無いという状況です。
というのも、知財検定2級試験の受験者数は年間で6000人程度いるのに対し、1級試験(特許)の受験者はわずか500人程度です。
試験内容が高度なわりに需要が少ないので、テキストを作るコストに見合わないということでしょうか・・・。
基本的には、1級試験対策は、
過去問で試験傾向を把握しつつ、自分の知識が足りないなと思う分野について、自分で教材を見つけて勉強する
というかんじになります。
1級試験の過去問題集は市販されていますし、公式サイトからも見れることができます。
従って、まずは、1級試験の過去問題集を揃えて、実際に解いてみることをおすすめします。
1級試験の過去問題集については、コンテンツシティ出版から出ている「知財検定1級特許専門業務 最新過去問題」があります。
教材探し&インプット
1級試験対策としては、上記の過去問を解くだけでは不十分で、出題範囲の各テーマについて、さらに自分で勉強を進めていく必要があります。
ただ難しいのが、学習に適切な教材を自分で探してこなければならないところです。
いかに適切な教材を探し出して対策できるかが、1級試験の合格のポイントといっても過言ではありません。
知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)の主な出題範囲は以下のようです。
- 国内の特許権利化
- 契約(共同開発契約やライセンス契約など)
- エンフォースメント(特許侵害訴訟など)
- 知財戦略(IPランドスケープ、ポートフォリオマネジメント、オープン&クローズ戦略)
- 米国など外国の特許実務
- その他(知財評価、税関、独禁法など)
(詳細な出題範囲は公式サイトをご確認ください。)
これらのうち、2級試験の出題範囲外である、外国の特許実務あたりは特に対策が必要です。
これらに対策するための教材は、後ほどご紹介します。
まずは学科試験の合格を目指す
知的財産管理技能検定1級は、
- 学科試験:マーク式の筆記試験
- 実技試験:いわゆる面接試験
の2つに分かれています。
学科試験と実技試験は別日程で開催され(半年ごとに交互に実施)、学科試験の合格者でないと実技試験を受験できないようになっています。
従って、まずは学科試験の合格を目指すことになります。
学科試験はマーク式なので一見簡単そうに見えますが、1級特許専門業務の学科試験の合格率は8%程度と、かなり難しい試験になります。
ただ、実技試験に比べるとまだ対策がしやすいと言えますので、上で紹介した過去問題集をやりこんで、出題形式をばっちり把握しておきましょう。
実技試験は対策がさらに難しい・・・
上で述べたように、学科試験を突破すると、実技試験(面接形式の試験)が待ち構えています。
実技試験は、
- 筆記試験室で記述式の筆記試験を行う(20分 ※回によって変更あり)
- その後、口頭試問室にて筆記試験の問題についての質疑応答を行う(第1題:約4分、第2題:約6分)
という2段階で進みます。
出題される問題のテーマは毎回変わりますし、口頭試問では試験官に対して口頭で質疑応答する必要があるため、対策が難しいです。
真の意味での特許実務能力が問われているといえるでしょう。
ただ、特許専門業務の場合、実技試験の合格率は90%程度となっており、かなり高いです。
学科試験に合格できるレベルであれば、実技試験でも通用する実力があると言えます。
あとは、試験範囲に対応する知識をどれだけ完璧に詰めれるかです。
学科試験の勉強で使った教材などに今一度目を通して、理解を完璧にする、日頃の実務で課題感をもって臨む、といった姿勢が求められます。
1級(特許専門業務)試験の教材
上で紹介したように、1級試験ではそれ専用のテキストは存在せず、自分で教材を探して勉強を進める必要があります。
つまり、試験対策のための教材探しが合格のポイントになるわけですね。
以下、1級試験(特許専門業務)の出題範囲うち、主に出題比率が高く受験者のネックとなりやすい契約や外国実務などについて、対策のための教材を挙げてみたいと思います。
ただ、下記の教材で出題範囲が完璧に網羅できることを保証するものではないので、その点ご了承ください・・・。
1級の過去問題集
1級試験に限った話ではないですが、やはり資格試験において過去問は唯一にして最高の教材です。
試験本番までに、必ず数年分の過去問題集を解いて、理解を完璧にしておきましょう。
1級試験の過去問題集については、コンテンツシティ出版から出ている「知財検定1級特許専門業務 最新過去問題」があります。
4回分の本試験の過去問が収録されており、解答と解説を掲載。
実際のところ、1級試験対策として市販されている教材としては、上記以外はほとんど見かけません。
4回分の過去問を解けば、本試験の出題形式や問われやすいポイントがなんとなく掴めてくるかと思います。
過去問を通して、出題範囲の中で自分の知識が手薄になっている分野を把握しておきましょう。
>> 「知財検定1級特許専門業務 最新過去問題」の商品ページ
なお、アップロードという会社も、1級試験の過去問題集を販売しています。
しかし、こちらは同社のWeb Shopから販売されているのみで、書店やアマゾンでの扱いはありません。
知財検定向けテキスト
上で「知財検定1級のテキストは無い」と書きましたが、そうは言っても、試験範囲が網羅されている参考書を揃えたい、という場合もあるでしょう。
そんなときにおすすめなのが、「知的財産管理技能検定2級 完全マスター 特許法・実用新案法」です。
知財検定2級のテキストになりますが、内容が充実しており、1級(特許)対策の参考書としても使えます。(ただし、外国特許についての詳しい記載はありません)
なお、本書の出版は上述のアップロード社で、長年知財検定向けのテキスト・問題集を出し続けている、この分野では老舗の会社だったりします。
独自に知財検定の対策講座もやったりもしてますね。
>> 「知的財産管理技能検定2級 完全マスター」の商品ページ
契約
1級試験では、ライセンス契約や共同開発契約などについて、それなりにつっこんだ知識が問われます。
例えば、問題文に契約書の抜粋が掲載され、
- 契約書の内容(秘密保持や発明帰属などがどうなっているか?)
- 会社の立場として修正すべき条項があるか?
といったような問題が出題されます。
特許権利化を専門にやっている人は、契約の知識が手薄だったりするので、勉強しておきたいところ。
かくいう私も、実務でほとんど契約をさわったことがなかったので、契約の問題の対策には苦労しました・・・。
知財の契約については、「技術法務のススメ 事業戦略から考える知財・契約プラクティス」を読んでおくと良いです。
技術系の企業が、契約においてどんな点を注意すべきかがわかりやすく書かれており、勉強になります。
>> 「技術法務のススメ 事業戦略から考える知財・契約プラクティス」の商品ページ
また、ネットでも探せば有益な資料が結構落ちています。
例えば、東京都知的財産総合センター作成の「中小企業経営者のための技術契約マニュアル」は、かなりわかりやすく書かれているので、入門に良いですね。
あとは、INPIT作成の「知っておきたい特許契約の基礎知識」も、初心者向けに特許契約の論点が網羅的にまとめられています。
普段の実務であまり契約を触る機会がない方は、こういった資料に目を通しておくと良いでしょう。
外国特許実務
1級試験の特徴として、外国の特許実務について出題されます。
特に出題頻度が高い米国の特許実務を優先して対策しましょう。
米国特許法の実務知識を身につけるのに最適なのが、「米国特許プラクティカルガイド」です。
著者の小西 恵氏は、元IBMのSEで、弁理士を取得して特許事務所で勤務した後、ワシントンDCの法律事務所での実務経験があります。
日本の特許実務から見たときの、米国特許制度の特徴が意識されて書かれているため、米国特許実務の勘所がわかりやすいです。
専門書にしては、値段が比較的お手頃なのもうれしいところ!
その他、日本知的財産協会の「米国特許をうまく取得する方法」なども参考になりますね。
一般には公開されていませんが、お勤めの会社に置いてあれば目を通しておくと良いかと思います。
特許評価
特許価値の算定手法、
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
は繰り返し出題されるテーマなので、必ずおさえておきましょう。
「知的財産の価値評価について(特許庁)」にざっと目を通しておくと良いでしょう。
独占禁止法
契約の問題とからめて、独禁法について出題されることがあります。
公正取引委員会作成の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」に目を通しておきましょう。
特許ライセンスの実務家にとって必読の資料と言われているものです。
その他
その他、特許調査や知財戦略など、1級試験の出題範囲に関連する書籍を挙げだすときりが無いです。
特許実務に使える本については、下記の記事でまとめていますので、上記以外に対策したい分野があればこちらも参考にしてみてください!

まとめ
というわけで、1級試験は難易度が高く、対策のための教材も限られているので、かなりハードな試験となります。
上で紹介した教材を再掲しますので、参考にしていただけると幸いです。
- 米国特許プラクティカルガイド
- 米国特許をうまく取得する方法
なお、知的財産管理技能検定の難易度や全体的な試験制度については、下記の記事で詳しく書いているので、こちらもあわせてご参照ください!

また、知財検定2級の勉強や受験体験については、下記で書いています。
