最近では、弁理士のキャリアパスとして、特許事務所から企業の知財部への転職が結構あります。
日本弁理士会会員の分布状況によれば、2018年3月時点で弁理士の約22.8%が会社勤務しており、今や企業の知財部門は弁理士のメインの就職先の一つ。
では、企業の採用担当者としては、特許事務所出身の弁理士をどのように評価するのでしょうか?
もちろん、採用ポリシーは企業によって大きく異なりますが、この記事では企業の立場から一般論を書いてみたいと思います。
本記事の内容
弁理士の転職が成功するかはポジション次第
特許事務所のキャリアが評価されるかは、企業側が求める募集ポジション(どういう役割を求めているか)次第であると言えます。
企業の採用担当者が考えること
まず、一般論として、企業側が採用の際に考えることを整理しておきましょう。
企業における採用の場面においては、
- 職歴がポジションと合うか?
- 待遇・年収がすり合うか?
- キャラクターが組織に合いそうか?
- 能力は高いか?(優秀そうか?)
- 今後の伸びしろがあるか?(ポテンシャル)
あたりを総合的に見て、採用の可否を判断します。
もちろん、採用する企業によって重視する項目は変わってくるのですが、結局の所、企業の採用担当者の一番の関心事は、
候補者が自社でワークするのか?(期待する役割をはたしてくれるのか?)
ということです。
候補者がワークするかの判断は、「募集ポジションに対して特許事務所での職歴が合うか?」というところに大きく依存します。
ここで、同じ知財業務とはいえ、特許事務所と企業知財部とでは、やってることの違いが結構あります。
一般的には、特許事務所は対特許庁への書面作成業務に特化しているのに対し、企業知財部は特許権利化や調査、係争対応など幅広く行うことが多いです。
なので、企業がどういう人材を求めているかによって、特許事務所の職歴が評価されるかどうかが変わります。
大手メーカーが弁理士を採用する理由
例えば、大手メーカーなどで特許事務所出身の弁理士を採用するケースを見かけます。
メーカーがあえて特許事務所出身の弁理士を採用するのは、特許出願や権利化の即戦力として期待されているからに他なりません。
大手メーカーの知財部では自社内で特許明細書や意見書・補正書の作成を行うケースも多く、そのようなスキルの高い特許事務所出身の弁理士を求めるのです。
つまり、企業の募集ポジションと特許事務所の経験がマッチしているわけですね。
逆に言えば、社内において明細書等の内製を行っていない企業であれば、特許事務所の経験があまり評価されない可能性はあるかもしれません。
もちろん、弁理士として知財の法律や実務を知っているのは強みですが、企業知財部出身の候補者と同じ土台で戦うことになります。
企業の採用においては、弁理士資格はポジティブに作用するものの決め手にはならず、結局は職務経歴がポジションに合うかの方が重視されます。
企業への転職が有利になる経験・スキル
弁理士が企業に転職する際に、特に有利になる経験やスキルはなんでしょうか?
ポイントとしては、十分な明細書作成能力に加えて、プラスアルファがあるかどうかだと思います。
発明発掘に深く関わった経験
上述したように、特許事務所出身の弁理士は書面作成能力を期待されて採用される場合が多いです。
このとき、書面作成能力と親和性があり、評価されやすいのが発明発掘の経験・スキルです。
例えば、
あんまり固まってない発明に対して、クライアント側の発明者にヒアリングして情報を引き出して、発明の形に仕上げた
というような経験でしょうか。
企業知財部においては、開発者から発明ヒアリングして、それをある程度まとめてから特許事務所に依頼する(あるいは社内で明細書をドラフトする)というケースが多いです。
従って、発明発掘の経験が豊富だったり発明者とうまくコミュニケーションをとれそうな人は、採用において有利になります。
特許出願、権利化以外の業務経験
特許事務所において業務の比率的に少ないですが、特許調査や鑑定、無効審判などの対応の経験があれば、さらに有利です。
企業知財部では、わりと調査とか抵触判断などの業務があります。
従って、特許出願・権利化の経験に加えて、上記のような業務の経験があれば、企業受けは良いでしょう。
企業経験の無い弁理士は敬遠される可能性も?
あとは、企業経験の有無も考慮要素です。
例えば、新卒から特許事務所に入ったなどで一般企業で働いた経験の無い弁理士は、企業から敬遠される可能性があります。
というのも、特許事務所は小規模の組織で、且つ基本的には事務所の中に個人商店が入っているような構成。
一方で、企業はものごとを進めるのに関連部署とやり取りしなければならなかったり、何かを進めるのに上司(場合によっては上司の上司)の承認が必要だったりと、組織のスタイルが全く異なります。
また、代理人の立場とクライアントの立場とでは、知財に対する考え方も異なります。
(事務所は案件獲得と登録査定を得ることにインセンティブがあるのに対して、企業は権利活用や費用対効果を意識しなければならない。)
そのため、企業経験が無い弁理士の場合、会社になじまないのではないかと思われ、採用するのをためらう可能性があります。
もし企業経験が無ければ、ポテンシャルがある若いうちに動いた方が良さそうです。
企業への転職活動の進め方
特許事務所だと弁理士会の採用ページ等で求人がたくさん出ていますが、企業の求人はあまり公開されません。
そのため、企業への転職であれば、リクナビなどの転職エージェントを使うのが基本です。
エージェント側の担当者との相性だったり、エージェントによって持っている求人情報が微妙に異なったりするので、下記のようなメジャー所に複数登録しておくのが良いでしょう。
結論としては、本気で転職活動するなら、無難に転職エージェントのお世話になるべき!
下記のようなメジャー所にいくつか登録しておきましょう!
- マイナビ
※20代や第二新卒の転職におすすめ!応募企業への面接対策をしっかりやってくれます
- リクルートエージェント ※言わずと知れた業界最大手。サポート体制がしっかりしています
- ビズリーチ(BIZREACH) ※スカウト型の転職サイト。求人を出していない企業からオファーが来る可能性もあり、登録しておきたい
まとめ
というわけで、特許事務所出身の弁理士が企業への転職が成功するかどうかは、企業がどういった人材を求めているかによります。
基本的には、企業内での特許出願・権利化業務をメインで行うポジションが弁理士には有利だと言えます。
企業への転職案件は基本的に転職エージェントが持っていますので、下記のような大手のエージェントに登録することをおすすめします。
結論としては、本気で転職活動するなら、無難に転職エージェントのお世話になるべき!
下記のようなメジャー所にいくつか登録しておきましょう!
- マイナビ
※20代や第二新卒の転職におすすめ!応募企業への面接対策をしっかりやってくれます
- リクルートエージェント ※言わずと知れた業界最大手。サポート体制がしっかりしています
- ビズリーチ(BIZREACH) ※スカウト型の転職サイト。求人を出していない企業からオファーが来る可能性もあり、登録しておきたい
なお、企業知財部への転職の進め方については、「【体験談】知財部員の転職活動〜転職エージェントをこう使った!」で詳しく書いておりますので、あわせてご覧ください!
