特許戦略論 ~特許戦略実践の理論とノウハウ~

公開日: : 最終更新日:2017/02/16 書評(知財本) ,

特許戦略論 ~特許戦略実践の理論とノウハウ~ (mag2libro)
久野 敦司
パレード
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最近、久日に知財本を読んだのでご紹介します。

特許戦略論 ~特許戦略実践の理論とノウハウ~ です。

著者は久野敦司氏。

正直、この本については存在を全く知らなかったのですが、ネットを徘徊していた際にたまたま著者のホームページを見つけ、本書の存在を知り、購入するに至りました。

そして読んでみた感想として、ちょっとかわった本だけど、特許戦略について非常に実践的で示唆に富んだ内容だなぁと感じました。

 

まるで兵法書?!

本書は、著者が実戦、考察してきた特許戦略について、非常に体系的に説明されています。

特許戦略など諸々の用語の定義、特許戦力の説明とその高め方、特許戦略の形態、発明発掘のやり方、果てには日本国への知財教育の提言など、特許戦略を軸にしつつ非常に濃い内容です。

 

内容の濃さもさることながら、軍事っぽい表現がやたらと登場するなど、文体にかなりの癖があります。

まるで兵法書を読んでいるようなかんじですね。
(著者は軍事マニアなのかしらと思ったら、海上保安大学のご出身でした。)

例えば、特許戦略の定義を説明するくだりでは、こんなかんじです。

【特許戦略の定義】
時間、空間(国)、技術分野、ビジネス分野という軸で張られる経済活動空間において、特許パワーと情報パワーと組織パワーの結合からなる構造体である特許戦力を、目的のために最適に実現し活用する計画。

 

他にも、「特許戦略の中核である特許権は、次の点で弓矢に似ている。」という一文が突然出てきて、特許権と弓矢の共通点の説明が始まるなど、息もつかせぬ展開が目白押しです(笑)

 

こんな調子で特許戦略の話がえんえんと語られるため、ちょっと取っ付きにくい印象を受けるのですが、書いてある内容は非常に実戦的でなるほどと思わせます。

 


“"

 

特許戦力を構成する3つのパワー

個人的に、本書から特に感銘を受けたのは、「特許戦力」について説明されているパートでした。

上の特許戦略の定義であったように、特許戦力とは、

  • 特許パワー
  • 情報パワー
  • 組織パワー

の3つを合わせたものです。

 

特許パワー

ここで特許パワーとは、特許件数や、権利範囲の広さ、侵害発見容易性、カバーする事業領域の重要性などを総合的に考慮したもので、企業が保有する特許群そのもののパワーを言うようです。

普段我々が「いい特許を取る!」といって頑張っているのは、この特許パワーを高める活動だといえます。

これについては、多くの人が普段から意識しているところですね。

 

情報パワー

本書で言う情報パワーとは、特許内容へのアクセス容易性、他社製品に対する侵害発見能力、公知技術の調査・分析能力などの総合力になります。

たしかに、特許活用の場面において、これらの能力は非常に重要ですね。

他社の実施状況の把握がちゃんとできて、且つそれに使える特許が自社の膨大な特許ポートフォリオの中からさっと出てくる、というのが理想なわけで。

本書では、抽出のしかたや他社実施状況の監視方法などが具体的に書かれており、参考になります。

 

組織パワー

組織パワーとは、ひらたく言えば知財部門の能力や士気、権限(社内における地位)、予算といったものの総合力を指すようです。

これも言われてみればたしかにというところでして、組織パワーが強いか弱いかというのは特許戦力にすごく関わってきますね。

例えば、知財担当者が特許のことをチンプンカンプンだったりやる気がまるで無かったりしたらどうしようもないですし、あるいは知財部門がいくら頑張って活動しようとしても他部署の協力が得られなかったりしたら厳しいわけです。

だから、知財部内で教育を行ったり、他部署や会社の上層部に特許の重要性をうまくアピールして協力を得たり予算を引き出したりといった、組織パワーの強化が必要になってくるというわけです。

このあたりは、知財実務者である著者の徹底したリアリズムに基づいた知見ですね。

 

私がこのくだりが素晴らしいと思った理由は、特許戦力という総合力が、互いに性質の異なる3つの要素から構成されている、ということを明確にしてくれるからです。

これを意識することで、まず、3つのパワーについてバランスよく考えることができます。

というのも、普段我々が特許戦略の話をするとき、特許パワーにばかりフォーカスして、情報パワー、組織パワーについては見落としがちになるということが往々にしてあります。

これはある種仕方ない面があって、知財関係者の大多数が特許権利化を中心にやっているため、個々の特許の権利範囲とか有効性とかに関心が向いてしまうのです。

しかし筆者が言うように、実際に特許を活用する場面では、侵害発見能力、さらにそれを実行する組織の状態まで含めた総合力で勝負することになるわけです。

なので、3つのパワーをバランスよく考え、それぞれを高める活動をすることが大事になります。

 

また、企業内で行う施策が、どのパワーに効くのかがはっきり意識できます。

例えば、他社製品の監視や社内の知財教育など個々の施策をすでに実行している企業は多いと思いますが、諸々の施策がこの3つのパワーのうちのどれを高めるための活動なのかを明確に意識してやっている人は少ないのではないでしょうか?

情報パワー強化のために他社製品の監視態勢を整える、あるいは組織パワーを高めるために開発部門に知財教育をする、といったように活動目的の明確化ができれば一層効果が高まりますし、バランスよくリソースを割り当てることができそうです。

 

最後に

私は本書を読んで、特許戦略を策定する際に何を考えたら良いかということが、自分の中で体系的に整理されたように感じました。

本書は、純粋な特許戦略を語った本としては、かなりの名著だと思います。

内容のすばらしさの割にはあんまり認知されていない気がするので、もっと知名度があってもいいのではないかなと。
(まあ、単に私が知らなかっただけかもしれないですが。。)

というわけで、本書は、企業で特許戦略に関わる方には必携の書。
是非、一読をおすすめします!

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