知財の仕事の中でも特許と並んで重要となるのが商標業務。
商標は商標で、結構独特な実務的知識が要求されたりします。
私は元々特許専門でやっていたのですが、転職してから商標も扱うことになりました。
一応、弁理士試験で商標の勉強はしたことがありましたが、やはり実務となると全く勝手が違っており、なにか問題にぶち当たる度に諸々の書籍に目を通した記憶があります(笑)
というわけで、この記事では、商標の実務におすすめの書籍をご紹介します!
本記事の内容
国内の商標実務におすすめの本
まずは、商標実務の基本となる、国内の商標業務に参考となる書籍を挙げていきます。
商標の類否
商標の実務をやっていて、一番出くわす問題が商標の類否判断です。
例えば、商品名を決める場面で、「これは!」と思えるようなキャチーな名前を思いついたとき、大抵類似と思われるような先行商標が見つかることが多いです。
そんな場合は、別の商品名を検討すればいいのですが、担当者の思い入れがあったりして変更したくないというのはよくある話・・・。
そんなわけで、実務上、商標どうしのシビアな類比判断が求められることは多いです。
そんなときに真っ先にひらくのが本書「商標の類否」です。
本書では、商標の類比判断についていくつかの類型に分けて、膨大な量の審判や判例の事例が紹介されています。
特に称呼類似については、母音が共通するもの、子音が共通するもの・・・、といったように非常に細かく分類してあります。
また、商標どうしの類否判断の結果(類似 or 非類似)が一覧でまとめられており、判断結果が一目でわかるようになっています。
実務で実際に遭遇しているケースと近いような判例・審決が見つけやすく非常に参考になりますね。
商標法(茶園)
商標の実務において法的な論点が出てきたときには、商標の基本書をあたることが多いです。
商標法の基本書だとかつては網野が有名でしたが、これらは出版されてからかなり年数が経っているのが玉にキズ・・・。
そんな中、商標法の基本書の中でも読みやすくて,比較的出版年が最近なのが茶園先生の「商標法」です。
基本書にしては、比較的コンパクトにまとまっており、且つ図表・写真が盛り込まれているので説明もわかりやすいです。
商標法(平尾)
こちらは、平尾先生が書いた商標の基本書「商標法」。
知名度で言うとこちらの本の方が有名ですかね。
全体で600ページ以上とかなりボリュームがあり、商標法についての法的論点が詳しく網羅されています。
Q&A商標法律相談の基本-商品名検討からプロモーションまで
「Q&A商標法律相談の基本」は、商標の実務でよくあるような相談内容がQ&A形式でまとめられています。
企業などで知財担当者に寄せられるような相談内容について、最初にQ&Aで簡潔に解答をまとめ、その後に関連する法的知識や判例等を詳細に解説する、という構成になっています。
さらに、
- 商品名の検討
- 商品化
- 市場導入
- 事業発展
といったように、商品化の事業段階ごとに項目が分けられており、検索がしやすくなっています。
全体的なボリュームも抑え気味で、実務で困ったことがあったらさっと確認できるのがいいですね!
外国商標実務におすすめの本
続いて、外国の商標実務で役に立つ本です。
海外での事業展開を検討している企業であれば、必ずと言っていいほど海外での商標権取得を行います。
そのため、商標担当者であれば、外国の商標実務の知識が求められる場面は多いです。
見ればわかる!外国商標出願入門―主要国での商標出願と国際登録出願の実務
外国で商標の出願を行う場合、かなり幅広い国で取得を検討することが多く、中には特許なら絶対出願しないようなマイナーな国が含まれることもあります。
そんなときに、各国の商標制度の概要をざっと確認するのに便利なのが、「外国商標出願入門」です。
「この国の商標制度ってどうなってたっけ?」というときに、まずは本書にあたることが多いですね。
米国 / 欧州 / 中国の商標実務書
世界各国の中でも米国、欧州、中国はマーケットが大きく、外国に商標出願する場合に、これらの3地域を含めることが実務的に多いです。
以下、米国、欧州、中国のそれぞれの国(地域)の商標実務について、詳しく書かれた書籍を挙げます。
人によっては全てを参照する頻度はそれほど多くないかもしれませんが、特定の国の出願の頻度が高い場合には目を通しておくとよいかと思います。
米国
欧州
中国
商標によるブランディングにおすすめの本
商標と切っても切り離せないのがブランディングです。
いわゆる弁理士が扱うような商標業務とは少し遠い話ですが、企業の商標担当者の場合、業務内容によってはブランディングの知識が必要になる場合もあります。
ブランド管理の法実務
「ブランド管理の法実務」は、ブランド・ビジネスを行っていくうえで、ブランド管理の実務や法務のポイントを平易に解説した本です。
商標の実務的な面からブランディングについて書かれた本はあまり無く、非常に貴重な本と言えますね。
商標担当者がブランディングについて学びたいという場合には、まずは本書から目を通しておけばよいのではないでしょうか。
ブランド戦略全書
「ブランド戦略全書」はブランド戦略を扱った本で、どちらかというとマーケティングの人向きですが、ブランディングにがっつり関わる人は読んでおいて損はないかと。
ブランドの歴史や概念から始まり、ブランド戦略や効果測定、それらに付随する事例など様々なテーマが網羅されており、ブランディングへの一段深い知識が身につきます。
本書の構成上、様々な著者のブランディングに関する論文を編集した形になっているので、必要に応じて関連する項目を読むというスタイルが良いかなと思います。
なお、本書の章の1つに「知財観点でのブランドマネジメント」という項目があり、知財とのからみでの記載もあります。
その他
おまけで、上では挙げなかったけど、商標実務に関係するかも?というものを補足的に紹介したいと思います。
楽しく学べる「知財」入門
本書「楽しく学べる「知財」入門」は、知財担当者というよりは一般向けの書籍でして、商標を含む知的財産について、興味深い事例を交えながら非常にわかりやすく解説してあります。
著者の稲穂健一氏は知財の話を大衆向けにわかりやすく書いた本を多数出しており、おもしろさ・わかりやすさで定評があります。
もし周りに「商標について勉強したい!」と言う奇特な人がいれば(笑)、まずは本書を差し出すと良いでしょう。
商標審査基準
書籍かと言われると微妙なので、上では挙げませんでしたが、やはり商標の実務で商標審査基準は外せませんね。
商標審査基準はその名の通り、特許庁における商標の審査において「こういう基準で審査しまっせー」ということがまとめられている資料。
例えば、拒絶理由でよくある第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)では、審査においてどういう手順で商標どうしの類否を判断するかや、外観・称呼・観念についての類否判断の具体例などが載っています。
やはり担当者としては、商標の出願・権利化を進める上で、当然ながら特許庁でどういう方針で審査が行われるかを知っておくことが不可欠です。
あと、審査基準は、弁理士試験の商標の勉強でも参照しますね。
なお、商標審査基準は製本されたものもありますが、以下の特許庁のサイトからPDFファイルをダウンロードすることもできます。
(参考)商標審査基準
まとめ
というわけで、商標実務におすすめの書籍として下記をご紹介しました。
ご参考になれば幸いです!
なお、「【知財戦略が学べる本!】知財担当者のおすすめ5選」という記事で、商標含む全体的な知財戦略の本を紹介しています。
知財戦略の本には定番があり、私が過去に読んだ本の中から「これは!」と思うおすすめの本を紹介していますので、こちらもぜひ!
